ブログ 2009/3

ホンダ インサイト試乗レビュー[AT-1京都山城 社長のブログ]

投稿日時:2009/03/14(土) 00:00

ホンダ インサイト 試乗レビュー
http://autos.yahoo.co.jp/ncar/review/report/mm0314/1/

189万円からという戦略的な価格で登場し、発売から一カ月で、目標の月間5000台を大幅に上回る約1万8000台の受注を達成した新型インサイト。さっそく、その人気の秘密を探ってみることにしよう。

トータルバランスのよさを徹底的に追求。
 ホンダがこれまで日本国内で販売してきたハイブリッドカーは初代インサイトとシビック・ハイブリッド。
 前者は2シーターで徹底的な空気抵抗低減ボディを持ち、さらにはアルミフレームという贅沢な素材まで投入して燃費世界一を狙った、先進技術の博覧会的なモデルだ。日本では2000台ちょっとしか販売されていない。
 後者はきちんとした実用性を持っているが、トヨタ・プリウスの後塵を拝してきた。ハイブリッド専用車ではなかったのが、その理由のひとつと分析されている。
 環境負荷低減ということを考えれば、燃費がよく有害物質排出の少ないエコカーは、広く普及させなければ意味をなさない。そこで2代目インサイトは実用的なハイブリッド専用車としての拡販を狙って登場した。189万円からという価格も量販を目指したがゆえだ。
 もちろんホンダの思いは、低価格だけではない。使い勝手や走りも含めてトータルバランスに優れたハイブリッドカーを目指し、新型インサイトは開発された。
 ハイブリッドカーは、もう特別なものではないのだ。

コンパクトなハイブリッドシステムが生み出す余裕の室内空間。
 日本メーカーもグローバル市場を重要視せざるを得ず、ここ数年ボディサイズは肥大化の一途を辿ってきた。その中にあって、インサイトが5ナンバーサイズ選んだのは見識と言えるだろう。
 燃費を意識した低全高で高い空力性能を追求したフォルムは、広い室内空間を稼ぎ出すには不利。しかし、ホンダのハイブリッドシステムはシンプルでコンパクトなため、それを克服している。
 バッテリーとコントロール・ユニットが収まるIPUは、シビック・ハイブリッドよりもさらに小さくなり、荷室床下に配置される。ガソリンタンクは後席下。見事なまでにスペース効率が追求されているのだ。


 フィットと比べると室内幅は15mm広く、室内長は110mm長い。長さと幅、それに荷室容量は十分だ。ただ室内高はフィットに対して140mm低い。
 前席は何ら不満を感じないが、ルーフラインが後ろに向かって下がっていることもあって後席の頭上空間に余裕はない。室内に収まってしまえば、それほど窮屈ではないが問題は乗降時。何も意識しないでスッと乗り込めるフィットと違い、ルーフに頭をぶつけないよう気を使う必要はある。

排気量以上の加速力を発揮。一定条件下でのEV走行も可能だ。
 1.3リッターエンジンに組み合わせるモーターは10kW。シビック・ハイブリッドよりも5kW少ないが、それでも軽量なインサイトに対して動力性能は十分だ。ある程度回転があがらないと力がでないエンジンと違って、回り始めた瞬間から威力を発揮するモーターの恩恵は確実に感じられる。
 停止時はアイドリングがストップされる。発進しようとブレーキ踏力を弱めていくと、自然な感覚でエンジンが始動し、ほとんど時間をおかずにグッと太いトルクで走り始める。一定速走行から加速に移る際なども、1.3リッターとは思えない力強さで押し出される。
 エンジンとモーターとトランスミッションが連結しているため、モーター単独で駆動することはできない。その代わり、あまり力を必要としない場面では、エンジンが全気筒休止し、モーターのみのいわゆるEV走行ができる。
 もっとも、発進時は必ずエンジンがかかっているし、EV走行は本当に低負荷の狭い範囲だけでしか行なわないので、プリウスのような「いかにもハイブリッド」という新鮮な感覚は薄い。

ほとんど感じられないハイブリッド車特有の操作フィーリング。
 誰でも扱いやすいクルマを目指したインサイトは、ハイブリッド車特有の違和感を払拭している。
 従来のハイブリッド車で一番違和感があるのはブレーキの操作感だろう。
 シビック・ハイブリッドは、回生効率を上げていることもあり、踏み応えに違和感がある。しかし、インサイトにはそれがない。もちろん、減速エネルギーを電気に換える回生は効いているが、いたって自然な踏み心地だ。性能的な問題もない。
 ハイブリッド車の多くは、燃費を高めるため転がり抵抗を抑えたタイヤを使用するが、それが操縦安定性に悪影響を及ぼすことがある。それを嫌ったインサイトは、あえて転がり抵抗低減を狙わず、一般的なタイヤスペックとした。
 そのおかげで、ステアリングフィールや直進安定性、コーナリング性能、ブレーキング性能などで、「ハイブリッド車だから」と我慢させられるようなところはない。
 乗り心地は、街中ではまずまずだ。高速域では路面の荒れに対して敏感なところがあり、ブルブルとした振動が伝わる傾向が強い。

燃費性能だけがハイブリッド車の価値ではない。
 気になる燃費性能は、街中オンリーでリッター15km前後。高速道路を一般的なペースで流すとリッター20km前後で、首都高速などを時速60km前後の燃費効率のいい領域で淡々と走ると、リッター25kmオーバーといったところだ。
 プリウスと比較すると、ある程度以上の速度域ではそう変わりがないが、低速域ではかなわない。プリウスのハイブリッドシステムは、少々複雑で重量もコストもかさむが、EV走行の頻度が多く、街中で有利だからだ。そこは、システムの違いと、40万から50万円の価格差で納得できるところだろう。
 もっとも、絶対的な燃費性能だけがハイブリッドカーの価値ではない。
 精神的な満足感も求められており、だからこそハイブリッド専用車の需要があるのだろう。
 それを手頃な価格と自然な運転感覚、使いやすさなどでより多くの人に提供してくれるのがインサイトなのだ。

試乗日:2009年2月18日
ロケ地:東京都・港区周辺
天候:晴れ
文:石井昌道
撮影:小平 寛

<< 2009年3月  >>

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31